ORBEAツアー 第一章
ORBEAツアー 第一章
若い頃、私は自転車レースに明け暮れた。
力だけで勝つのが大好きだった。
他人に力を使わせて、最後だけ掴み取る走りもある。
でも私は、そういう勝ち方をカッコいいとは思えなかった。
ぶっちぎって、正面から勝ちたかった。
あの頃の自分は、単純で、真っ直ぐだった。
ここ数年、ずっと考えている。
なぜ自分は、今ここに立っているのか。
自転車が好きなはずなのに、
「この業界は厳しい」「先が見えない」
そんな言葉ばかり目にする。
さて、どうする? 自分。
時代のせいにするのか。
人口減少のせいにするのか。
市場環境のせいにするのか。
それとも、もう一度、自分の魂を震わせるのか。
そんな時にいただいた、ORBEAジャパンさんからのお誘い。
Orbeaは1840年、スペイン・バスク地方で創業。
もともとは銃器メーカー。
1930年に自転車製造へ転換。
そして経営危機を迎えた時、
会社を救ったのは株主ではなく、従業員だった。
従業員が会社を引き継ぎ、協同組合化。
掲げるビジョンは
「We, not Me(私ではなく、私たち)」
利益至上主義とは一線を画す、
“思想”を持ったメーカーだ。
工場を視察させていただいた。
まず驚いたのは、人の多さ。
事務フロアには100人以上。
明るく、清潔で、どこか大学の図書館のような空気。
圧力はない。
でも、凛としている。
女性スタッフも多く、
空間全体に柔らかさと知性がある。
工場には最新設備。
昨年より増設され、機械は1台から3台へ。
人員はこの5年で約4倍。
塗装ブースには、世界各国へ向かうフレームがずらりと並ぶ。
そこから感じたのは、
「未来をつくる」という明確な意志。
かなりの投資。
かなりの覚悟。
正直に言えば、
日本の現場で、今一番足りていないのはこれだと感じた。
“厳しい”と解説することは簡単だ。
でも、未来をつくる側に回る覚悟はあるか?
自分はどうだ?
レースで学んだことは一つ。
本気で踏み込めば、景色は変わる。
今、自分の魂を振るわせなければ、
自分もまた「時代のせい」にしてしまいそうだ。
それは、あの頃の自分が一番嫌っていた生き方だ。
OVER-DOは、これからどう走るのか。
そのヒントは、
“WE”という言葉の中にある気がしている。


